調査員オススメの逸品 第199回 古代冶金学の一大成果-甲賀市鍛冶屋敷遺跡出土炉壁

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炉壁(1)

 今回、紹介する逸品は、鍛冶屋敷遺跡から出土した銅精錬炉の炉壁(1)(2)(3)です。これらの炉壁は平成19年(2007)に滋賀県指定文化財に指定されています。出土した地点は、平成22年(2010)年5月に、国史跡に指定され、史跡紫香宮跡(鍛冶屋敷地区)となっていますが、今回の紹介での遺跡名は、調査を行った時の遺跡名「鍛冶屋敷遺跡」で進めさせてもらいます。
 鍛冶屋敷遺跡の発掘調査成果については、以前、「新近江名所圖会 第80回 鍛冶屋敷遺跡-紫香楽大仏に関する重大な発見-」で紹介しました。鍛冶屋敷遺跡は甲賀市信楽町黄瀬に所在し、甲賀寺推定地の史跡紫香楽宮跡内裏野地区から北東約450mの位置にあります。発掘調査は、新名神高速道路建設に伴って、滋賀県教育委員会と(財)滋賀県文化財保護協会が平成14年(2002)8月から平成16年(2004)3月まで約6,000㎡を対象に行ないました。鍛冶屋敷遺跡は、聖武天皇が行った紫香楽での大仏造営に直接関わる遺跡とみて間違いないと私は思っています。

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炉壁(2)

 発掘調査では、銅の精練・溶解に伴う土坑が14基発見されています。その中の1基(第1鋳造遺跡群西列第3ユニット土坑1)から炉壁がばらばらの状態で、175.99㎏出土しました。土坑からの一括資料ということもあり、炉壁の接合を試みました。炉壁の接合というのは、滋賀県はおろか、全国的にみても事例はほとんどありません。ただ、検出した遺構の状況が、「半地下式竪形炉」という、古代の東日本でみられる製鉄炉の形式と似ているので、その遺構の状況と比べながら、各炉壁の裏表、上下関係、炉のどの部分に位置するのかを考えながら、整理室の机の上に並べました。そして、グルーピングし、接合していきました。この一括資料の接合は、調査補助員の藤田みつるさんが粘り強くしてくれたおかげで、炉壁(1)(2)(3)の3個体となりました。接合は予想以上の出来映えで、古代の冶金考古学の大成果で、まさに逸品と言えるでしょう。

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炉壁(3)

 送風孔付炉壁(1)は送風孔付近、炉の中段上半に位置します。炉壁の内面のカーブの状況から、炉の内径は約100㎝に復元できます。炉壁(2)は送風孔の左下、中段下半から基礎部分に位置します。送風孔付炉壁(1)の左下に接合します。炉壁の内面のカーブの状況から、炉の内径は約65㎝に復元できます。炉壁(3)は送風孔の右下、中段下半から基礎部分に位置します。送風孔付炉壁(2)の右下に接合します。炉壁の内面のカーブの状況から、炉の内径は約65㎝に復元できます。
 以上のことから、送風孔付近の炉の平面形は前後65㎝、左右約100㎝の横長の楕円形を呈することがわかります。当時の製鉄炉や溶解炉の中で国内最大のサイズを誇る炉であることが判明しました。今回逸品であげた炉壁をもとに復元した銅の精練炉の復元案については、近々、レポートしようと思いますので、ご期待下さい。
(大道和人)

《参考文献》
・滋賀県教育委員会(2006)『鍛冶屋敷遺跡』
・大道和人(2013)「滋賀県指定有形文化財考古資料 鍛冶屋敷遺跡出土遺物について」『紀要』第21号 滋賀県立安土城考古博物館

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