調査員オススメの逸品 第175回 土地条件図-発掘調査にも,防災にも役立つ地図

図1 土位遺跡付近の土地条件図

図1 土位遺跡付近の土地条件図


図2 土地条件図の凡例(地形が細かく分類され,色別に示されています)

図2 土地条件図の凡例(地形が細かく分類され,色別に示されています)


 発掘調査を行う場合、周囲の地形は遺跡の立地を考えるうえで重要な手がかりとなります。二万五千分の一地形図や二千分の一地形図の等高線から微地形を探す作業も重要ですが、手っ取り早く現状地形や土地利用状況を知る地図として土地条件図があります。
 土地条件図とは、防災対策や土地利用・土地保全・地域開発等の計画策定に必要な、 土地の自然条件等に関する基礎資料を提供する目的で作成された主題図です。
 昭和34年(1959)に、伊勢・東海地方に大損害を与えた伊勢湾台風の洪水や高潮の被害が地形分類結果と深く関係していたことがきっかけとなって国土地理院で作成がはじまりました。平成26年(2014)12月現在では、大都市を中心に152面が整備されています。
 この土地条件図は、二万五千分の一地形図をベースに、地盤高線(1m間隔の等高線)や山地・台地・低地などの地形分類が重ねて表示されています。情報ごとに色わけされていることから、非常にカラフルで、視覚的にわかりやすい地図に仕上がっています。
 とくに、低地や丘陵部の地形は詳細に分類されていますから、平地部における遺跡の立地条件を考える手がかりになるのです。
 たとえば、平成27年度に愛知川左岸の堤防遺構を検出した東近江市土位遺跡を例にとって、この遺跡の立地を土地条件図で確認してみましょう(図1・2)。土地条件図の地形分類を参考に土位遺跡の場所を確認してみると、古い時代に形成された愛知川扇状地(下位段丘)を開析した緩やかな扇状地の上に位置していることがわかります。詳細にみると、この付近は周囲に比べて低いので、愛知川による洪水の被害が大きかったことが想定されます。そのような場所であったからこそ、堤防を築く必要があったと考えられるわけです。 
 このように、遺跡の立地を調べるうえで重要な資料となる土地条件図ですが、地図に示された情報は、あくまで現状の地形と土地利用の状況であることから、地面の下の埋没地形を知るには、現在にいたる間に地面に加えられたさまざまな改変を引き算していかねばなりません。そのためには、土地条件図以外にも、過去の地形図や空中写真等で補正を行いながら検討する必要があります。
■おまけ
 近年、各自治体によって自然災害による被害を予想して被害範囲を図化したハザードマップが公開されています。土地条件図も防災対策が発端となって作成された地図ですから、自然災害の起こりにくい場所を予想することができます。例えば、平地に存在する「自然堤防」は河川によって運搬された土砂が堆積した微高地ですので、周囲の低地とくらべて浸水の被害が小さくなる傾向があります
(神保忠宏)

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