調査員オススメの逸品 第174回 未来の考古学者の力作展示-中学生の職場体験と一般公開のコラボレーション!

写真1 中学生諸君の展示解説コーナー

写真1 中学生諸君の展示解説コーナー

写真2 展示を見ながら、どんな会話が弾んだのでしょうか 

写真2 展示を見ながら、どんな会話が弾んだのでしょうか 


 当協会の部署の1つに,滋賀県立安土城考古博物館内の整理調査課安土分室があります。今回,逸品として取り上げるのは,そこで生まれた〈力作展示〉です。
 この分室の業務の柱は,県内の発掘調査で得た資料を発掘調査報告書として刊行していくことですが,これに加えて2つの柱も重視しています。
 1つは地域貢献です。地域あっての博物館・文化財ですから,地域の皆様の暮らしや教育に少しでも役立ちたい。そんな思いを強く持ちながら,近隣中学校の生徒さんの職場体験を毎年受け入れています。
 もう1つは発掘調査成果の一般公開です。灼熱の太陽の下,あるいは寒風吹きすさぶ中,私たち調査員・スタッフは必死に発掘調査をして,地域の皆さんもこれを暖かく支援してくださっています。そんな調査で見つかった〈文化財〉を,そのまましまい込んでしまう訳にはいきません。調査成果を皆様の目に触れる機会をより多く作っていく。これも私たちの大切な仕事です。
 ・・ということで,今回,この3つの柱のコラボレーションを試してみました。①私たちの調査作業を,②中学生の職場体験で取材してもらい,③その結果を展示品にして一般公開してしまおう――という趣向です。
 この職場体験にきてくれたのは,近江八幡市立安土中学校二年生でした。初めて文化財に触れる3人組みです。取材や展示の経験も,もちろんありません。対応してくれたS調査員の指導はなかなかのもの。手取り足取り教えると言うよりは,問いかけ,中学生自らがアイデアをひねり出す方向で指導してくれました。ナイスだよ,S調査員!
 中学生諸君も最初は勝手が分からないようでしたが,未知の領域を知っていくことはやはり快感が伴うのかも。次第に,のめり込んでいく姿が,まざまざと見えました。分室の作業やそこで使われている道具などについて,中学生の目線でスタッフさんに次々とインタビュー。デジカメで写真を撮ったり,模造紙で説明パネルを作成したり・・。自分の家族に説明するような丁寧さで作った「手作り感」満載の展示が完成しました。題して――あなたの知らない整理作業の裏側!
 一般公開デビューは,2015年9月20日(日)の分室作業公開日です(写真1)。ここでうれしいことが2つありました。1つは,一般の方々にとって,大変親しみやすい展示になっていたこと。どうしても私たちは,パソコンで作り込み,プリンターで出力した展示にこだわりますが,中学生が懸命に書いた手書きのパネルの訴求力は,なかなかのものでした。
 もう1つは,製作した中学生の一人が,お母さんとおばあちゃんを連れてきてくれたこと(写真2)。自分が頑張った展示を,はにかみながら説明している姿を思い出すと今でも胸が熱くなります(涙)。お母さんとおばあちゃんから,ご丁寧な御礼を頂戴しましたが,御礼をすべきなのは,むしろ私たち。とっても良い勉強をさせていただきました。
 ありがとう。中学生諸君!・・もし可能なら,今回の職場体験を契機に文化財を更に好きになって欲しい。そして願わくば,君たちの夢の一つに,考古学者になるという選択肢を是非加えてみて欲しい。そんな願いも併せて持ちたくなるような,素敵な逸品となりました。(瀬口眞司)

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