調査員のオススメの逸品 №254 発掘作業の大事な“おとも”・・・一輪車

この連載では、発掘作業の中で私たち調査員が日常的に使う道具の数々が紹介されてきています。今回はその中から、「一輪車」をご紹介したいと思います。

「一輪車」といえば、皆さんはどのようなものをイメージするのでしょう?私は完全に「四角いお皿状のバゲットに二本の取っ手がついている手押し車=工事現場などで使う一輪車」をイメージしていましたが、インターネットで検索すると最初に出てくるのは、サーカスや小学校などで使われている、「一つの車輪に自転車のサドルがついているもの」でした。なるほど、確かに一般的に「一輪車」といえばこちらのほうがポピュラーです。

写真1 一輪車(=孤輪車)

写真1 一輪車(=孤輪車)

では、私がイメージした「工事現場などで使う一輪車」をピンポイントで示す言葉はあるのか?ということですが、実は存在します。「孤輪車(こりんしゃ)」という言葉がそれで、国税庁の「収支内訳書(農業所得用)の書き方」にある「主な減価償却資産の耐用年数表」の「運搬用機具」の欄の例示に用いられている名称です。また、特許庁の「意匠分類定義カード」では「一輪作業車」と呼称されています。

さらに2輪のものを含めて、猫車(ねこぐるま)、猫(ねこ)と呼ばれることがあります。なんで「ねこ」なのか?ですが、実はこの理由については諸説あり、確定はしていません。その諸説を紹介すると、
1.猫の首のように、どの方向にも曲げられることから。
2.逆さに伏せてみると、底の部分が丸まって寝ている猫の背中に似ていることから。
3.工事現場などの細い板で作った足場を「猫足場(=キャットウォーク)」と言い、そこを通ることが出来る運搬車だから。
4.猫のように運ぶ時、ゴロゴロと音を立てることから。
5.漆喰(しっくい)を練った「練り子」を運ぶために用いられたので、「ねりこ車」略して猫車。
6.砂鉄や鉄鉱石を「ネコ」と呼ぶことがあり、こうした鉄の原料を運ぶ車だから。
7.昔、猫の後ろ両足を持ち上げて、前両足で歩かせる遊びがあり、その格好と一輪車でものを運ぶ格好が似ていることから。
8.中国の三国時代、蜀で兵糧運搬用に開発された木牛流馬と呼ばれた運搬道具の小型モデルが一輪車に相当するのではないかという説から、「牛や馬など大型の動物」に対する「小動物」≒猫?
 などなどですが、どれも説得力が微妙な気がしますね。

ちなみにドイツでは手押し車を俗にKipp-Japaner (日本人) と呼ぶそうです。しかし別に日本でしか使わないというわけではなく、日本でいつから使われていたのかも不明です。

他人がこれを使っているのを見ると簡単そうに見えますが、実際やってみると左右にふらつき、使いこなすには多少の慣れが必要です。水を含んだ土を大量に積むと相当な重さになるので、一輪車での土運びは結構な重労働でもあります。加えて足元も悪いため、調査現場で使っていると、かなりの頻度でパンクします。タイヤの空気が抜けると、一輪車を押すときの抵抗がすさまじく増すので、タイヤはとても大事です。別売りなので付け替えて使いますが、最近は「ノーパンクタイヤ」なるものもあります。通常のタイヤはゴムチューブ式ですが、「ノーパンクタイヤ」はゴムの塊で形成されており、パンクすることはありません。かわりに少々柔らかいので、泥にめりこみやすく、現場の状況によっては向かないこともあります。

写真2 タイヤ部分 簡単に交換できる

写真2 タイヤ部分 簡単に交換できる

また、電動補助付きのものも存在します。同種の自転車と同じで、上り斜面などでは便利なようですが、補助器がついている分全体の重量が増しており、これも使いやすさは状況次第と言えます。昔、ある現場で試験的に使ってみたことがありますが、押している技師の勢いが良すぎて逆にエンジンブレーキがかかってしまい、むしろ重くなって進まない、という事態になったこともありました。

このように、「一輪車(=孤輪車)」は今も進化を続けています。けれど結局、私たちが一番お世話になるのは昔ながらのシンプルなものです。これで運ぶのは土だけではありません。重いカメラバッグや発電機、ポンプ、あるいは水なども。

いろいろな道具が今後も登場してくるでしょうが、発掘現場や工事現場でこの「ねこ」が「ゴロゴロ」と鳴く姿は、今後も消えることはないような気がします。
(阿刀弘史)

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