調査員のおすすめの逸品 №316 粘土―大昔から身近だった優れものの「素材」―

 このコーナーで、以前、「焼成粘土塊(しょうせいねんどかい)」という遺物について紹介(調査員のおすすめの逸品No.307参照)しました。その際に、「混和材(こんわざい)」という、粘土に混ぜる砂粒・鉱物等についても、簡単に述べましたが、加えてもう一つ、忘れてはならないのが「粘土」です。そもそも「粘土」ってなんでしょう?

写真1「土の粘土」で土面作り(5歳児)

写真1「土の粘土」で土面作り①(5歳児)


 「粘土」は、地層中から得られる「粘り気のある土」です。現在みなさんによく知られた「粘土」としては、陶芸などでも使われる「土でできた粘土」でしょうか。他に、昔から学校の工作などで良く用いられていた「紙粘土」や、手に強烈な臭いがつく「油粘土」、熱で柔らかくなる「蝋粘土」、などが比較的よく知られていますし、消しゴムやおが屑を素材とするものや、さらに最近では小麦粉や米粉など子どもが口にしても大丈夫な素材の粘土まであります。
 その中で、今回取り上げるのは、最もポピュラーな「土でできた粘土」です。現在でも陶芸などに使われるのはもちろんですが、国内では、古くは一万数千年前に作られたいわゆる「縄文土器」まで、世界史的には、遅くとも二万数千年前の「土偶」まで、その使用起源がさかのぼります。水分を含んだ状態では、自由に形を変えることができ、押せば凹むし、踏めば広がります。千切れば細かく離れますし、くっつければ一つにまとまります。このように、物体に力を加えて形を変えること、また力を取り除いても変形がそのままになる性質を「可塑性(かそせい)」と言い、湿った状態の粘土は可塑性に富んでいます。そして乾いたら固くなり、火で焼けば形が固定されます。まるで、呼べば応えるように、こちらの手の動きに反応・応答し、形を変えることから、「応答的な反応をする素材」とも評されます。
写真2「土の粘土」で土面作り②いろんな形にちぎられた粘土片

写真2「土の粘土」で土面作り②いろんな形にちぎられた粘土片


 「何を今更当たり前のことを。。」というお声も聞こえてきそうですが、でも改めて考えてみると、実はこのような「可塑性に富んだ応答的素材」って、世界中を探しても「粘土」ぐらいしかないのでは?と思うのですがいかがでしょう。例えば金や銀などの「金属」もある程度は変形も、形の固定もできますから、例えば金属製品もそう呼ぶこともできるかも知れませんが、その前提として専用の設備や道具、技術が少なからず必要になります。一方で「粘土」は、専用の設備・道具等は特に必要としませんし、年齢や例えば障害の有無などにも関わらず、誰でも簡単に扱うことが可能です。つまり、「土の粘土」を用いた旧石器時代の土偶や縄文時代の土器の発明というのは、誰にでも手軽に扱うことが可能な、とても画期的な大発明だったと言えるのかも知れません。
(鈴木康二)

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