調査員のおすすめの逸品 №290 記録写真の新たな相棒-フルサイズデジタルカメラ

写真1 従来の写真撮影セット

写真1 従来の写真撮影セット


 発掘調査では掘削した遺構や出土した遺物などの状況を写真撮影して記録を行います。発掘時の遺跡の写真は、ほとんどが「その時」しか撮影ができないことから極めて重要な記録であり、撮影された時点から「写真そのものが文化財」となっていくわけです。また、現像された焼き付けられた写真だけでなく、フィルムなども保管されています。
 私の職場(公益財団法人滋賀県文化財保護協会)では、これまで6×7ブロニー版フィルムカメラでモノクロフィルムとカラーリバーサルフィルム、35mmフィルムカメラでカラーネガフィルム(写真1)、そして補助的にデジタルカメラ(APS-C)の合計4台のカメラで記録写真の撮影していました。既に広く普及しているデジカメを「補助的」としているのは、保存対象となる写真の保管の永続性という観点から、今後記録媒体がどのように変化していくかが不透明であるといったデータの保存・保管方法などに課題があったため、あくまで重視されるのはフィルムカメラの写真でした。
 ところがデジタル化の波に伴いフィルムの生産も中止される見通しで、特に4×5版フィルムは残っている在庫に頼る状況、6×7版フィルムは安定的に入手できない状況となってきました。さらに中判カメラ本体は歴戦をくぐり抜けてきた老体であるため故障がちなのですが、故障の場合は部品が手に入らず、修理が不可能となるケースも増えてきました。そもそもカメラ本体が生産停止で入手できない状況となっていました。また、撮影したフィルムを現像できる業者さんも少なくなってきています。そのような状況の中で、滋賀県に限らず全国の埋蔵文化財業界でフィルムからデジタルへの移行が不可避となってきたのです。
写真2 フルサイズデジタルカメラ

写真2 フルサイズデジタルカメラ


 そこで新たな記録写真の相棒として導入されたのが『フルサイズデジタルカメラ』です(写真2)。これによって今まで4台使用していたカメラは、2020年度から2台のデジタルカメラ(写真3)にバトンタッチされることとなりました。個人的にうれしかった点として、4台のカメラが入った重たいカメラバックを担いで移動していたときは肩にアザができていましたが、これがなくなったことです。
 これまで補助的に使用してきたデジカメは『APS-C』と呼ばれるもので、新たに導入された『フルサイズ』とはセンサーサイズが異なります。当然、センサーサイズが大きくなればより多くの画像情報を取り込むことができるため画質や画角も大きくなりますが、データサイズも増大することや、高精度であるため拡大した場合には手ブレなども目立ちやすくなります。そのため永年保存や今後の活用を念頭に置いた「キメの写真」をフルサイズ、もしものための保険の写真および発掘過程のメモ写真などをAPS-Cでというように、目的により使い分けて撮影しています。
 ところで、30代半ばである私も実はデジカメ世代で、カメラといえばオートフォーカスでシャッターを切るだけという感覚でした。フィルムカメラを使用したのも発掘の仕事に携わるようになってからで、不慣れな頃はフィルムがきちんと装填されていないまま撮影を続けていたり、絞り値とシャッタースピードについてよく理解できていなかったため、現像された写真の仕上がりを見て唖然としたりと多くの失敗もしてきました。フィルムカメラを使わなくなり、デジカメの基本モードをあらかじめ設定をしておいてシャッターを切るという簡単な操作性と、その場で確認して何度も撮り直しが可能といったフィルムカメラとは異なる性質に少し物寂しさも感じます。
写真3 新写真撮影セット

写真3 新写真撮影セット


 私より少し年上の方がレコードからCDに替わったときの感覚に似ているのかもしれません(もしかしたら・・・)。また、調査区の全景の写真撮影では、半日、広い調査区の場合は1日以上かけて清掃して写真撮影しますが、かつてのカメラ台数から半分になり撮影時間も短くなっているため、作業員さんから「あれだけ時間をかけて頑張ったのに、もう撮影は終わり?」と思われていないかと変に気を遣ってしまうことがあるのは私だけでしょうか。
 今日も発掘現場では新たな相棒とともに記録写真の撮影に励んでいます。今後、逸品になるに違いありません。(小林裕季)

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