調査員のおすすめの逸品 №284 石器作りの道具、気に入った石との出会いと別れ―敲石

大きな原石でも、この敲石があれば大丈夫

大きな原石でも、この敲石があれば大丈夫

 私は縄文時代草創期の遺跡と出会ってから、石器の勉強をしていましたが、どうしても理屈では理解できないことに多くぶち当たりました。これを打破するには、自分で石器を作るしかないと思い、ここ数年は石器作りに励んでいました。
 励んでいたといっても、簡単なことではありませんでした。石器の材料は石であり、材料の石を割る道具も石なのですが、これがまた簡単には割れないのです。やみくもに叩いても割れません。ハンマーとなる石を当てる角度、ハンマーとなる石の形や重さ、当てられる石材の角度などなど、石を当てるときの動きを、コマ送りで見えるくらいの余裕がないと上手くいかないのです。最初の頃は手足に打ち身や切り傷ばかりをつくりました。
 そうして練習していくうちに、自分の手になじむ道具が分かってきます。道具といっても石なのですが・・・。どこをどうすれば原石が思うように割れ、次はここ、次はここ、という感じで、パズルのように分かってきます。このように思うように石材を割れるようになるには、気に入った道具となる石が必要なのです。

こんなきれいな剥片もとれます

こんなきれいな剥片もとれます

 写真は気に入った拳大の石で、人頭大ほどの原石を割って、剥片を採っているところです。この石、私のお気に入りで、もっと大きな石を割るときにも使っていました。
 しかし、今はもう使えません。壊れてしまったから。使いすぎです。壊れたときはショックでした。とっても残念でした。気に入ってたのに。だから捨てずに取ってあります。私の石器作りに協力してくれた相棒だから。

 このように、何かを作るには道具が必要になります。発掘調査では、土の中から使えなくなって捨てられたものがいっぱい出てきます。「壊れて使えなくなったから廃棄されたのだな」というのが発掘調査の遺物(そうじゃないのもありますよ)なのですが、中には愛着があり、泣く泣く捨てたものもあることでしょう。残念ながら、発掘調査では、人の思いや愛情がこもっているものかどうかを見分けることはできません。でも、自分も同じような思いをしていれば、少しは分かるのでは…。

壊れてしまった敲石

壊れてしまった敲石

 昔の人の気持ちが分かる調査方法が登場することを待っています…。
割れてしまった敲石-道具への愛を再確認させてくれた逸品です。(重田 勉)

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