調査員のおすすめの逸品 №281 日本の中世史を知るためにぜひ読んでほしい一冊 永原慶二著『日本中世の社会と国家』

永原慶二著『日本中世の社会と国家』

永原慶二著『日本中世の社会と国家』


 日本の歴史の中で平安時代の後半から戦国時代頃までは中世史に分類されます。この中世という時代は、権力が貴族から武士に移った時代とされます。ではその武士がなぜ権力をもてたのか。そこで今回はそれらの疑問に答えてくれる著書を紹介したいと思います。その本は『日本中世の社会と国家』増補改訂版(1991年、青木書店)です。著者は1980~90年代にかけて日本中世史研究を牽引した永原慶二先生です。
 この本の大筋の概要は、中世における国家権力のあり方を通して、日本中世史を概観してゆくものです。
 8世紀に成立した律令体制は10世紀に変質・崩壊し、それを機に農村の有力者は荘園の荘官になることから領地を持ち、武力を身につけて武士化してゆき、さらには武家の棟梁である源頼朝や足利尊氏を前面に押し立てて幕府を開き、公家衆をしのいで権力を確立していきました。
 中世当時の日本の主たる産業は農・林・水産業、その中でも農業の比率は高いものでしたから、生産地でもある土地が経済の源泉であり、土地を保有するものが、実質的な経済力を持ち、これを梃子にして権力を確立してきたといえます。農村に根付き、農村から出発した武家層が権力を確立してゆくのは、自明の理であったのかもしれません。平清盛や源頼朝などの偉人のみの政治的力量のみで武家政権が成立したのではないといえるでしょう。
 今回推薦する『日本中世の社会と国家』は、古代から中世の農村社会を中心に研究されてきた永原氏が、論を述べるにあたり貫徹して「農村」の視点から中世史の展開を書かれています。これによって理解しにくい律令国家から中世社会への移行、中世国家の成立、中世の農村がどのように変化して、さらには室町時代に至っては民衆の自立が達成された「惣村」がいかにして成立したかについて論じられており、日本中世史を理解するには適切な一冊だと考えて今回は紹介させていただきました。(濱田教靖)

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