調査員のおすすめの逸品 №276 歴史の再構築になくてはならない「遺物」

 埋蔵文化財の発掘調査では、人の行動によって地面に残された痕跡、あるいは地面に残された人間の生活の歴史を推測できる痕跡の内、動かすことのできないものを「遺構」と呼び、地面に残された人の痕跡の内、動かすことのできるものを「遺物」と呼んでいます。そして、その2つが備わった痕跡を「遺跡」と呼んでいます。
 「調査員の逸品」では、発掘調査(整理調査も含む)から得られた成果の中から様々な「遺物」をご紹介しています。
 「遺物」には、土器や土製品、瓦、農耕具や木簡など多種にわたる木製品(滋賀県は低湿地遺跡が多く出土例が多い)、石斧や石鏃などの石製品、銅鐸や鏡などの金属製品、装身具などのガラス製品など数多くのものがあります。
 なかでも、土器は出土数が圧倒的に多い「遺物」です。時期によってその用途や成形技法、形状が変化することから、時間を計る物差しとして考古学研究の編年の指標や研究の対象(型式学的研究)として非常に重要です。また、出土する土層が下ほど時期の古いことから層位学的研究の判断基準にもなりますし、胎土分析によって在地的な土器なのかあるいは他地域から運ばれてきたものなのかもわかる場合があります(産地同定)。
 その他にも「遺物」には、骨・歯などの動物遺体、種子や実などの植物遺体、花粉などの自然遺物、火山灰も含まれ、当時の食物や植生、時期判定の基準に利用されています。
 「遺物」は、過去の人が残した物質資料に基づいて人の過去を研究する学問である考古学をまさに支えているのです。特に、文献資料がなくても、まだ文字が使われていなかった時代でも、過去がどのような社会であったのか?どのような生活を送っていたのか?など、如実に語りかけてくれる歴史の再構築にはなくてはならないものなのです。
 非常に抽象的な「調査員の逸品」になりましたが、今後の本シリーズの展開‐少し専門的?あるいは少しマニアックな内容になるかもしれませんが-にもご期待ください。 (吉田秀則) 

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