
柱を据えていた礎板
(滋賀県守山市弘前遺跡)
これとは別に、柱下に設置して沈下を防ぐという手法には、「礎板」と呼ばれるものもあります。礎板は、柱穴の底に木製の板を置くことで、柱の沈みを防ぐものです。発掘調査では、建物の荷重により、はじめに掘った柱穴の底より柱が沈み込んだ痕跡がしばしばみられます。この沈み込みが均一でなかったり非常に激しいと建物は傾いてしまうので、地盤の緩いところでは礎板を置くことがあります。
ところで私たちは、発掘調査を行うのにあたって、休憩や急な雨などの避難場所としてコンテナハウスなどを置き、仮設事務所を設置します。暑い時期、寒い季節、天候の急変…仮設ハウスは有り難い存在です。

仮設ハウス柱下の板
こうした手法は古代において建物を良好な状態に保つ、大切な工夫でした。機械も無かった時代には、建物を建てて維持していくのは大変だったことが容易に想像されます。むかしの人も苦労したんだな―――仮設ハウスを見るたび考えます。まさに、「礎板」はいまに生きる古代人の知恵を結集した逸品です。
(中川治美)
参考文献:公益財団法人滋賀県文化財保護協会報告書 2007「ほ場整備関係(水質保全対策)遺跡発掘調査報告書35 弘前遺跡」