調査員のおすすめの逸品 №262 忙しい夏のちょっとした箸休めに… ―塩津港遺跡で出土した大量の“箸”―

 

塩津港遺跡から出土した大量の箸

塩津港遺跡から出土した大量の箸

 みなさんが食事の際に、必ずと言っていいほど使う箸。今や「箸の国」といえば、日本と言われるまでに、わたしたち日本人の食の象徴となりました。
 
 わたしたちが当たり前のように使っている箸が、平安時代の塩津港遺跡から大量に出土しました。なんとその数は、すべて合わせると数千点とも数万点とも言われています。長浜市に所在する塩津港遺跡は、琵琶湖の北端の沿岸に位置しており、平安時代の神社や港町が発見されたことで非常に注目を浴びた遺跡です。
 大量の箸は、神社を取り囲む溝や、港町拡張に伴う造成土などから出土しています。かつての塩津港は、神に祈りをささげる神社があり、多くの人や船が行き交う港町がありました。その姿は、にぎやかさと華やかさにあふれた、港湾都市といっても過言ではなかったと言われています。そしてこれだけの港町ですから、もちろん食事処もたくさん立ち並んでいたに違いありません。こういった大量の箸は、まさに活気に満ち満ちた町の姿を象徴しているのです。
丸太から箸を作る!

丸太から箸を作る!


 一方で神社の付近では、にぎやかに祭事をしていたと考えられています。人々は歌い、踊り、奏で、神に御饌(食物などの供え物)をささげたのでしょう。古来より、神にささげる御饌は、直接手で触れてはいけないという考え方がありました。そして御饌は、素木を削り出した箸を使い、神にささげた後、その箸は二度と同じものを使わなかったそうです。つまり、神社の堀から見つかった大量の箸は、多くの祭祀が行われたことによるものと考えてもいいのかもしれません。

 ひとと、命の源たる食物をはし渡しする箸。そして、ひとの祈りをのせて、神とのはし渡しをする箸。あらためて考えると、わたしたちが何気なく使っている箸には、さまざまなものとの仲介をする大事な役目があったのです。

 さてこの時代、箸はいったいどのように作られたのでしょうか?実験的に当時のことをイメージしながら製作してみました。

箸できあがり!

箸できあがり!

①丸太を斧で、ある程度の大きさに割っていきます。今回は杉を使用しましたが、ねじれのある質の悪い木だと、直線的にキレイに割れてくれません。昔の人たちも割れやすい木をしっかり観察していたのでしょう。②細かく割った材をさらに箸にしやすいようにナタで分割します。③そして、刀子(今回はカッターナイフを使いました。)などを使って、自分の使いやすいように削っていき、完成です。ちなみに、ある研究によると、人が使用しやすい箸の長さは、親指と人指し指を直角に開いて、二つの指の先端を結んだ距離の1.5倍ともいわれています。
 最後に、自分で作ったお箸で食事をすると、なんとも不思議!これほど不格好な手作りの箸がなんとも愛おしく見えてくるのです!どんなものでも自分で作ったものには愛着が湧くものですね!
 どうですか?自作のマイ箸を作りたくなってきましたか?みなさまのお忙しい時間の、ちょっとした箸休めに、下記のイベントでお待ちしております。

●夏のイベントの案内●
 県立安土城考古博物館の整理室では、この夏も整理調査公開事業を開催します。

自作の箸に大満足

自作の箸に大満足

「あの遺跡は今!Part26 親子でチャレンジ!みて・ふれる・考古学」では、普段は入ることのできない整理室での作業の様子を間近で見学できます。さらに塩津港遺跡で出土した大量の箸を参考にして、「My箸づくりに挑戦!」を実施します。楽しくお箸の文化を感じながら、自分好みのお箸を完成させてください。お子様の夏の自由研究もカンペキです!興味を持っていただけたら、ぜひ会場にお越しください!

  「あの遺跡は今!Part26 
      親子でチャレンジ!みて・ふれる・考古学」
 【日  時】令和元年8月3日(土)・4日(日) 午前9時~午後5時
 【場  所】県立安土城考古博物館 整理室内
 【参 加 料】無 料
 【申し込み】なし。ただし、「My箸づくりに挑戦!」のみ当
       日受付。各回先着順10組まで。
       各日午前10時から11時、
       午後2時30分~3時の計4回実施。
 【そ の 他】小学生のお子様向けに、自由研究シートを無料配布します。

【参考】 
 向井由紀子・橋本慶子(2001)
 『ものと人間の文化史102 箸(はし)』財団法人法政大学出版局

(木下義信)

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