今回紹介する逸品は、大事な遺物を運ぶ時に大活躍する梱包具です。

綿布団
それは、通称『綿布団』『綿枕』と呼んでいるものです。梱包の際の最も使用頻度の高い梱包具で、『綿布団』は綿を薄葉紙と呼ばれる丈夫な薄い和紙で包んだ作った緩衝剤です。用途に応じて様々な大きさを作ることができ、形も四角から三角、円形とアレンジすることができます。
この『綿布団』は、遺跡から出土した土器をはじめ、金属器、仏像など様々な文化財の梱包に使われます。この引っ張りだこの綿布団、どうしてこんなに重宝されるのか、それは素の綿にはない利点があるからです。当然、「どうしてそのままの綿ではだめなのか」「そのまま綿を詰めたりスポンジを詰めたりしても十分に用が足せるのでは」とお思いになる方もおられるでしょう。

綿布団使用状況
この状態で綿やスポンジをそのまま使うとどうなるでしょうか?そう、綿やスポンジがひっかかって、壊れたり傷ついたりする原因となってしまいます。そのままの状態では、遺物に引っかかりやすい綿を、丈夫な薄葉紙で包むことで先に挙げたような破損を防ぐことができるのです。
じゃあ、綿を包む材料を薄葉紙の代わりにビニールでも…と思う方もおられるかと思います。しかし、ビニールを使うと静電気が起こり細かい破片が引っ付いたり、ビニール自体の強度が強すぎて破れないため、何かの拍子で起こった強い衝撃がそのまま遺物に伝わり破損してしまう、といった問題があります。
『綿布団』の場合は薄葉紙が破れることで衝撃を吸収し、遺物に衝撃が伝わりにくくするという機能ももっているのです。
大きなものから小さなものまで文化財を運ぶ時にはこの『綿布団』があればなんとかなる!『綿布団』は文化財を運ぶための梱包具のエースなのです。
(合澤 哲郎)