
大型紙箱
大抵の人は長方形の紙を折って、箱を造った経験があると思います。しかし、日常的にこの箱を使うことはまずないでしょう。しかし、我々の仕 事場ではこの紙箱が様々なシーンで大活躍するのです。
整理調査の第一歩は、出土した土器の洗浄作業です。土器には様々な情報が含まれていますから、どんな小さな土器でもおろそかにできません。 けれども小さな土器や、一つの遺構から出土した土器が少ない場合など、大きな乾燥籠に入れておくと、乾かしている間にほかの土器と交じってし まい、取り返しのつかないことが起きる可能性があります。これを避けるために登場するのが新聞紙で折った紙箱です。このなかに、遺構ごと、層 位ごとに土器を分別しながら仕分けて入れ、乾燥させます。新聞紙や広告紙は、吸水性があり土器の乾燥にはもってこいの素材です。

小型紙箱
さらには浅い紙箱や深い筒型の紙箱、大きな紙箱、小さな紙箱、星形の紙箱等、用途に応じた(時には趣味的な)形状、用途に応じた素材で紙箱 を折る技が、整理室には伝承されています。
元々、廃棄の対象となる紙類で作る紙箱ですから、まさにリサイクル!エコな取り組みの一環ともいえます。世の中に無駄なものは何もないはず なのに、無駄なものが生まれるのは、それを無駄にしているのは人間の無知と、想像力の欠如なのかもしれません。整理室の調査補助員さん達は、 作業の内容に応じた一番適した形、素材の紙箱をせっせと折り、消費しています。ちょっとしたリサイクルから生まれた、我々の仕事に欠かせない 逸品です。
(大沼芳幸)