
曲物
曲物とは、ヒノキやスギなどの薄い板を筒状に曲げて、合わせ目をサクラなどの樹皮紐で綴じ、別材の底板に取り付けた容器のことです。現在でも、秋田県の大館曲げわっぱや長野県木曽地方のものが有名で、旅行に行くとお土産物として販売しているのをよく見ます。お弁当箱にいいなと思いますが、ちょっと高いのでいまだに買えていません。また、肉まんや焼売(しゅうまい)などを蒸す蒸籠(せいろ)も曲物の仲間です。遺跡から出土することも多く、楕円形や円形のものがあります。また、中世の遺跡などでは、井戸の底に設置する井筒としても用いられたものが出土したりします。
東近江市蛭子田遺跡では、弥生時代後期後半~古墳時代前期と古墳時代後期に流れていた川が幾筋もみつかっています。これらの川からは多くの土器や木製品が出土し、No.64でも木製の壺鐙を紹介しています。今回紹介する曲物も川の1つから出土しました。

曲物の出土状況
さてここで気になるのが、何が入っていたんだろうということです。大きいので弁当箱ではないでしょう。発掘現場から出てきた時に、いちおう中の土も持ち帰って洗浄してみたのですが、残念なことに土しかありませんでした。それもそのはず、川のなかでひっくり返っていたのですから、中身はとうになくなっています。なので、中身については想像をたくましくするほかないようです。食べ物?糸? 聞くところによると、曲物は便器として使用されることもあったそうです。さあ何が入っていたのか。それは今後の課題ということで。
この曲物や木製壺鐙が掲載される報告書が、平成26年3月に刊行されました。書名は『蛭子田遺跡2』です。くわしいことについてはこちらの報告書をご覧下さい。なお、『蛭子田遺跡1』も同時に刊行しました。また、毎年夏冬の2回、滋賀県立安土城考古博物館内の整理室で「あの遺跡は今!!」と題して整理調査の成果を公開していますが、次回開催のPart18において蛭子田遺跡から出土した木製品の展示・解説、さらには報告会を行いました。(内田 保之)