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よみもの : 新近江名所図会 :
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- 新近江名所圖會 第386回 膳所(ぜぜ)城下町を散策する―大津口から膳所神社―(前編)
- 新近江名所圖會 第385回 黒金門(くろがねもん)跡―特別史跡安土城跡―
- 新近江名所圖會 第384回 江戸時代の町人文化を伝える―大津祭曳山展示館
- 新近江名所圖會 第383回 岩間寺(いわまでら)―大津市と宇治市の境の山寺
- 新近江名所圖會 第382回 大津宿を訪ねて―逢坂(おおさか)峠から浜大津付近までを歩く―
- 新近江名所圖會 第381回 カメカメエブリバディ―カメにまつわるお話―草津市南笠町治田神社
- 新近江名所圖會 第380回 中世の趣き漂う建物群―甲賀町油日(あぶらひ)神社―
- 新近江名所圖會 第379回 お寺の境内にある小山は実は古墳だった―野洲市久野部1号墳―
新近江名所圖繪第224回 こんなところに前方後円墳が-竜王町薬師岩屋古墳
第112回で紹介した南笠古墳群でも取り上げましたが、前方後円墳のイメージといえば、最近世界遺産登録を目指している大阪府「古市・百舌鳥古墳群」を代表する古墳-全長482mを誇る大仙陵古墳(伝仁徳天皇陵)を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。平面形が「鍵穴」形で、小山のような墳丘、墳丘のまわりにめぐる水を湛えた濠、これが古墳の代表格、教科書にも登場する『前方後円墳』の姿に違いありません。
しかし、皆さんがイメージするこのような『前方後円墳』は、全国どこにでもあるわけではありません。でも、いわゆる『前方後円墳』とよばれる古墳というならば、意外と身近に存在していたりします。ただし、大きさは比べるのが失礼なサイズですが・・・。その例の一つが草津市にある南笠古墳群の1・2号墳の場合、全長は30m前後ですし、今回ご紹介する竜王町岩屋古墳から東に約8㎞程のところにある東近江市八幡社46号墳(第19回で登場)も全長24mと、非常にコンパクトなサイズです。
今回ご紹介する岩屋古墳も全長36mと、負けず劣らずコンパクトな『前方後円墳』です。この古墳は竜王町薬師にあり、全長36m・後円部径19m・前方部幅23m・墳丘の高さ約4mの規模で、後円部に横穴式石室がつくられています。
この岩屋古墳、石室内に不動尊が祀られており、「岩屋のお不動さん」として信仰の対象となっています。石室は、遺体を納めていた部屋(玄室:長さ5.4m・幅1.95~2.5m・高さ2.4m)と、その部屋に出入りする通路(羨道)から構成されています。ただ残念なことに、羨道部分は大半が崩壊してしまっています。
古墳の時期ですが、出土遺物が無いため確実なことは言えませんが、石室の形態などからみて6世紀中頃であると考えられています。
おすすめのポイントは、気軽にいける『前方後円墳』であることでしょうか。現在も石室内に安置してある不動尊が信仰の対象であることもあり(写真1)、石室に階段で近づくことができますし(写真2・3)、周りもきれいにしてありますので、墳丘上にも登ることができます。ブッシュの中をかき分けて、カマドウマ(俗称便所コウロギ)がいる石室の中を這っていかなくては見ることができないということはありません。そして、この岩屋古墳がある場所が、竜王のアウトレットモールのすぐ近所なのです。なかなか古墳見学+ショッピングという方はいらっしゃらないとは思いますが(笑)、アウトレットでの買い物ついでに古墳見学などいかがでしょうか。(堀真人)
●アクセス
自家用車 名神高速道路竜王IC下車、国道477号を約3分東へ、駐車場所あり。
公共交通機関 JR琵琶湖線野洲駅・近江八幡駅下車、三井アウトレットパーク滋賀竜王行30分、三井アウトレットパーク滋賀竜王下車徒歩15分
《参考文献》
竜王町史編纂委員会1987『竜王町史』上巻 滋賀県竜王町
滋賀県教育委員会・財団法人滋賀県文化財保護協会1994『岩屋古墳試掘調査報告書』