新近江名所圖會 第379回 お寺の境内にある小山は実は古墳だった―野洲市久野部(くのべ)1号墳―

 今回紹介するのは、新近江名所圖会第316回で紹介した円光寺の境内にある古墳です。

写真1 九重塔の奥に鐘楼がみえる

写真1 九重塔の奥に鐘楼がみえる


 円光寺は天台真盛(しんせい)宗に属する寺院で、宝永4年(1707)に成立した近江湖辺三十三所の第三十二番札所となっています。
 県道2号大津能登川長浜線に面した山門をくぐると、正面に重要文化財に指定されている銅板葺の本堂や石製の九重塔が見え、その左奥に鐘楼が見えます。
 では、古墳はどこにあるのかというと、実は、その鐘楼がのる小山こそが久野部1号墳という歴(れっき)とした古墳なのです(写真1・2)。
 久野部1号墳については、内部構造や副葬品の内容はわかっていません。しかし、久野部自治会館別館の建設等に伴う隣接地の発掘調査において墳丘の一部や周溝が見つかっており、全長約30mの帆立貝式古墳(上から見た墳丘の形が帆立貝に似ている古墳)であることがわかっています。円筒埴輪のほかに馬形埴輪も出土しており、その特徴から5世紀末~6世紀初頭の古墳と考えられています。
写真2 小山の上にのる鐘楼

写真2 小山の上にのる鐘楼


 なお、久野部1号墳の周辺には、久野部古墳群を構成する久野部2号墳や同3号墳があります。また、発掘調査では方墳2基も見つかっており、これらも久野部古墳群に含めて理解されています。東方に位置する同時期の野洲地域の有力な古墳群である大岩山(おおいわやま)古墳群との関係が注目される古墳群です。
 今日、各地で復元整備された古墳が観光資源や地域の歴史を学ぶための教材として活用されているように、古墳は築造以来さまざまな目的で利用されてきました。その利用方法は、古墳本来の墓としての利用だけでなく、今回紹介した久野部1号墳のように全く別の使われ方もあります。皆さんの身近にも意外な形で利用されている古墳があるかもしれません。注意して見直してみると面白いかもしれませんよ。

おすすめpoint
 鐘楼がのる久野部1号墳の墳丘は、石材や植栽によって美しく飾られています。こうした境内の美しい景観を鑑賞し、草木を愛でながら季節を感じるのもいいでしょう。

写真3 圓光寺境内の大行事神社(拝殿改修工事中)

写真3 圓光寺境内の大行事神社(拝殿改修工事中)

周辺のおすすめ情報
 円光寺の境内にある大行事神社では、最近、道路の拡幅工事に合わせて、老朽化していた本殿の覆屋(おおいや)や基壇(きだん)の石垣が美しい姿に改修されました。私が見学に訪れた際には、拝殿の改修工事の最中でした(写真3)。久野部1号墳を見学の際には、こちらもぜひ見ていただきたいと思います。

アクセス
【公共交通機関】JR野洲駅北口から徒歩約10分
【自家用車】名神高速道路栗東ICから約20分
  (※近くに駐車場はありません。見学の際は徒歩または公共交通機関の利用がおすすめです。)

(宮村誠二)

◆所在地:滋賀県野洲市久野部

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