お城は、史跡のなかでも、しばしば地域のシンボルや観光名所となっています。当時の建物が残っているなら、門・櫓(やぐら)・天守閣などをめぐるのがオーソドックスでしょうし、建物がなくても、郭(くるわ)・お濠・土塁・石垣を見ながら、攻防の様子を想像するのも楽しいものです。
さて、彦根市にある彦根城は、保存状態もよく日本屈指の美しい名城のひとつです。多くの観光客も訪れますし、地域の人たちの散歩コースにもなっています。かくいう私も買い物の行き帰りに城内を通ったり、夕暮れ時に散歩したりしています。何回も城内を行き来するうちに、石垣に注目して見てみると面白いかもと感じるようになりました。今回は、石垣の積み方ではなく、使われている石の種類や、石を切るための矢穴に注目して、ご紹介してみましょう。
彦根城は、関ヶ原の合戦後ほどなく、天下普請により築城されました。築城には尾張や越前の大名などがかかわりました。築城後も何回か修復の手が加えられ現在にいたります。その築城には多くの資材を必要としました。石垣の石もその一つです。大きく重い石が大量に必要となるので、その調達には頭を悩ませたと思います。
彦根城の石垣には溶結凝灰岩という石が使われています。この石は、彦根城が築城された彦根山では採れません。ですので、別の場所から運んできたことは確実です。彦根市内で溶結凝灰岩の産出地をさがすならば、荒神山をあげることができます。また、その他に多賀町や近江八幡市などでも採れます。
荒神山では、滋賀県立大学の研究チームによって、石を切りだした跡が新たに発見されています。山の石に残された矢穴の形から16後半~17世紀に石の切り出しがされていたと考えられています。また、文献の記録から、19世紀の初めころに切り出しがされていたことも分かっているそうです。彦根城の築城・修復の時期もこの期間に含まれます。

佐和口多聞櫓

天秤櫓

天守閣石垣の花崗岩
さらに、使われている石の種類別の割合は、石垣の場所により異なっているようです。天守閣の石垣には大きな花崗岩の石がいくつか使われていますし、花崗斑岩はあちこちのの石垣に少しずつ使われていました。なかでも注目できるのは黒門の石垣です。ここの石垣には、白っぽい花崗岩が多く使われていました。この違いに何らかの意味があるのかもしれません。
石垣の石に注目すると、地域の地質や、築城の歴史、石工たちの工夫などを見ることができるかもしれません。かなりマニアックですがいろんなお城の石垣の石を見てみると面白いかもしれません。
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アクセス
【公共交通機関】JR西日本 東海道本線 彦根駅下車 徒歩約15分
【自家用車】名神高速道路彦根IC下車10分、有料駐車場あり
・彦根城博物館
開館8時30分 閉館17時(入館は16時30分まで)
休館日12月25日~12月31日
[彦根城・玄宮園入場券]大人 600円・小中学生 200円
[博物館入館料]大人500円・小中学生250円
[彦根城・玄宮園・彦根城博物館セット入場券]大人1000円・小中学生350円
※30名以上からの割引あり
(加藤達夫)