新名所圖會第229回  小野氏ゆかりの古墳と神社 

小野篁神社本殿

小野篁神社本殿

小野氏とは
古代豪族小野氏は、近江国の南西部に位置する滋賀郡の北部、堅田付近を中心とした地域に勢力を広げていました。『新選姓氏録』等の文献によれば、旧滋賀郡には淡海臣(近江臣)・近淡海国造・和邇部臣・真野臣・小野臣など有力豪族の名が確認されますが、このうち蘇我臣の同族である近江臣以外はいずれもワニ氏の同族で、大津市の堅田から和邇あたりに本拠地をもつ氏族です。これらの氏族が5世紀中頃以降に滋賀郡の全体をおさえる首長として力を持っていたと考えられていますが、その中で7世紀以降は小野臣が最も有力な氏族であったとされています。
古代の有名な小野氏といえば、推古15年(607年)に遣隋使の大使となった小野妹子(いもこ)です。そのほかには、妹子の子で天武天皇に仕え太政官兼刑部大卿大錦上にまで登りつめた小野毛人(えみし)、平安時代前期の漢学者や歌人で参議の小野篁(たかむら)、クレオパトラ・楊貴妃と並んで世界の三美人に数えられた平安時代前期の六歌仙である女流歌人小野小町(こまち)、藤原佐理・藤原行成と並んで平安時代中期に三蹟と呼ばれた能書家の小野道風(とうふう・みちかぜ)などが有名です。

小野氏ゆかりの古墳
6世紀半ば以降7世紀前半頃までの近江にも横穴式石室を埋葬施設にもった小規模な古墳が爆発的に築造されるようになりますが、大津市北部の小野氏の勢力圏にも曼荼羅山古墳群や春日山古墳群など100基を超える古墳が造られていたことがわかっています。この時期の大津市域の古墳約1000基余りのうち、約25%がこの地に集中しています。
古代の小野氏の著名人といえば小野妹子ですが、妹子の墓とされている古墳が大津市小野水明に所在する唐臼山古墳です。この古墳は新近江名所圖會第100回で紹介されていますので詳しくは述べませんが、7世紀前半頃とされる古墳で、西側の封土が一部流失して石室が露呈している状況が見られます。
唐臼山古墳ほど著名ではありませんが、小野神社の境内にも後期の小野神社境内古墳群があり、円墳数基と箱式石棺が確認されています。また、小野道風神社の境内にも小野道風神社境内古墳群があり、前方後円墳1基と円墳1基が確認されています。こちらは前期の古墳と考えられています。小野道風神社と小野神社の間には石神古墳群があり、4基の円墳が確認されています。そのうちの1号墳は昭和49年に発掘調査が行われ、長さ約2.7mの横穴式石室から7世紀前半頃の須恵器の杯蓋・杯身・提瓶などが見つかっています。

小野小町石塔

小野小町石塔

小野氏ゆかりの神社
小野神社は、孝昭天皇の第1皇子でお菓子・餅の神とされる天足彦国押人命(あまたらしひこくにおしひとのみこと)の7代子孫の米餅搗大使主命(たかねつきおほおみのみこと)を主祭神としています。この神は小野妹子の祖先とされることなどが新近江名所圖會第5回で紹介されました。この神社は、小野氏全体を祀った神社ではないかと思われます。なお、この神社の境内に小野小町の墓とされる石塔が建てられています。

 小野篁神社は小野篁を祀る神社で、小野神社の境内にあります。本殿は檜皮葺の屋根を持ち、流造が多い神社建築の中で、切妻平入りの社殿は県内では当社と小野道風神社、そして和邇川が形成する扇状地の扇頂部分に位置する天皇神社の3棟のみで、いずれも国の重要文化財に指定されています。本殿は建物の様式が小野道風神社本殿と同じと考えられることから暦応年間(1338~1342)の建築であろうと想定されます。

 小野道風神社は小野神社の飛び地境内社とされ、南に約500m離れた場所に建てられています。本殿は小野篁神社と同じく檜皮葺の屋根を持つ切妻平入で、暦応4年(1341)に建築された建物です。こちらも国の重要文化財に指定されています。

 小野妹子神社は、唐臼山古墳の墳丘上に建てられた小さな祠です。古墳の東側や南側は急な斜面になっており、現在は樹木に覆われていますが、この唐臼山古墳から南東方向を望めば琵琶湖の南半部と湖南平野が一望できます。古墳の被葬者は琵琶湖の狭隘部ににらみの効く人物であったと考えられ、湖上交通に影響力を持った小野一族の長であろうと考えられます。つまり、遣隋使による外洋航海を乗り切った妹子の墓とされる説に非常に魅力を感じます

妹子神社公園からの琵琶湖の眺め

妹子神社公園からの琵琶湖の眺め

おすすめPoint
今回紹介した神社や古墳は大津市教育委員会によって散策コースが選定され、「小野周辺史跡案内図」という案内板が設置されています。
それにはJR小野駅からスタートするコースとJR和邇駅出発のコースの2タイプがあります。どちらから進んでもいいのですが、小野道風神社と石神古墳群の間の道は、鬱蒼した樹木の中を進むことになりますので、季節によっては一度琵琶湖側の市道に出たほうが歩きやすいと思います。なお、「小野周辺史跡案内図」は、小野道風神社の鳥居前の道と市道から小野神社に入る入口付近にあります。
小野妹子公園から南側の眺望をぜひ楽しんでください。(三宅 弘)

アクセス
・小野篁神社
【公共交通機関】JR湖西線和邇駅から徒歩20分
【自家用車】湖西道路和邇IC下車10分 駐車場あり

・小野道風神社
【公共交通機関】JR湖西線和邇駅から徒歩25分
【自家用車】湖西道路和邇IC下車10分 駐車場あり

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